そのころ、密かに自分の運命を定められたとも知らずエノリアは、城のすぐ側にある市場の人ごみに 身を投じていた。
この時間帯は幸いにも最も人数が多く、強い日差しから目を守るためフードや薄い布を頭からかぶった人も 多かったので、深くフードをかぶるエノリアを気にとめる者はいなかった。
商人たちの威勢のよい客引きに懐かしさを覚えながら、シャイナの用意してくれているはずの馬のいる場所へ、人ごみをくぐって足早に進んだ。商人たちをみると父を思い出す。そんなエノリアは、チュノーラ出身である。
アライアルはシャイマルーク他、チュノーラ、ルスカ、フュンラン、ナスカータという国からなっている。
それぞれ、五百年前の平定のさい、初代国王レーヤルークが腹心、また、その地の有力人物に分け与 えた土地である。三代目国王レイルークが、各地に王政を認め、彼らは王と呼ばれるようになった。代
わりに姻戚関係を結び、その各国との結びつきを強くさせた。現にゼアルークの母は、ルスカ国女王の妹であるし、ゼアルーク自身、もしもシャイナが月の娘《イアル》でなければ、生まれた時に婚約して
いたかもしれないのだ。ただ、ゼアルークにつりあう年頃の娘がなかなかいないこともあって、ゼアルークの王妃選びは難航している。
そもそも、もうほとんど血が近くなりすぎていて、この方法も限界だろうといわれている。だからこそ、付け込まれるような事態にはしたくないし、セアラという一つの壁だけで満足していられないのだ。
ともかく、チュノーラはルスカとシャイマルークとフュンランと隣接していた。だが、城はフュンラ ンとは遠かったし、シャイマルークとは険しい上に盗賊の出るノイド山脈で遮られていた。
ルスカとの往来が一番易しく、ルスカからシャイマルークに入る道筋をとる商人が多かった。エノ リアの父はそのうちの一人だった。
(元気かな。父さん、母さん)
父は裕福な商人だった。海際の人の多い町で手広い商売をしていた。だけど、エノリアの存在を隠すために商売のしにくい山奥へ引っ越したのだ。そのころはまだ少なかったが、魔物が現れても大して対処の出来ないようなところだった。海際なら一週間に一度は帰ってきていた父だったが、山奥になると、一月に一度帰ってくるかこないかだった。その間、エノリアは母と二人きりだった。随分と年の離れた姉は、エノリアの生まれてすぐに嫁に行っていて、エノリア自身、義兄に宮へ売られるまで会ったこともなかった。
そんなとりとめのないことを思い出しながら、エノリアは人ごみをくぐる。いつ発覚するか分か らないのだ。シャイナは充分に時間稼ぎはすると言っていた。だけど、予定は狂うものだから。
(カッシュの香りがする…)
市場には今が旬の果物の香りが漂う。果物は二つの高原を持つナスカータから送られるものが多いの だろう。生鮮食品を出荷するとき、水魔術師《ルシタ》が伴うことが多い。水魔術で冷やしたり新鮮さ
を保ったりするそうだ。これは下級魔術師でもできるので、専ら彼らはこういう仕事を日々の糧にするのだと聞く。最近は魔物がいつ出るか分からないので、そのために剣士や魔術師が商人と契約することが多くなってきた。生鮮食品を扱う商人は、攻撃も出来る上級の水魔術師《ルシタ》を重宝している。
上級になれば値は上がるが、下級水魔術師《ルシタ》と剣士を雇う金額とさして変わらない。
エノリアは普通の人々とはまた異なった気配を感じて、ふと顔を上げた。市場へ買い物に来ている 人々や、諍いや盗難に対処するために配された兵士、そういうものとは明らかに異質な気配だった。
顔を上げたエノリアは一人の男の顔を見て、なにか引っかかるものを感じた。その男は馬上で、六人 の男を二人ずつに分け、違う方向へ行くように命じていた。
その時、エノリアの記憶はよみがえった。
(あの時の男だ。私を迎えに来た二人の使者の片方だ。今はゼアルーク王の側近とかいう、名前は確か …セイ。)
そこまで考えて、エノリアは思わず硬直した。その側近がここにいて、何かを探しているようだということは?
セイは逆方向へ馬を走らせ行ってしまった。彼の配下は兵士の格好はしていなかったが、屈強な体 をし、腰に剣を下げていた。王宮の兵だろう。しかも、王の側近の配下……。その者達はゆっくりとこちらに歩み寄りながら、ベールをかぶった女を一人一人さりげなく検分している。自分を探しているとしか思えないではないか。
(私、かな)
セイはおそらく他の場所にも配下を配置するために行ってしまったのだろう。下手をすればシャイマ ルークから出る道路にも人が配備される。しかし、ここはこの場を切り抜けるしかない。ひとまず、さ
りげなく方向を変えよう。と、エノリアはすっと来た道を戻ろうとしたが、さすがに側近の配下ともあ って目ざとく、その行動に不審を抱いたらしい。さすがに、大声で呼びとめようとはしなかったが、そ
の歩調が倍も早くなった。
それを、すこし振り替えって見たエノリアは、仕方なく、走り出す。なにしろ、捕まってしまっては、 そこで終わりなのだから。
二人の男のうち一人は、他の四人に知らせるためにその場を離れた。エノリアはそれに気づかなかっ た。そして、一人の男は巧みにエノリアを市場の賑わいから、人通りの少ない場所へ追い込んでいく。
地にエノリアの倍も利のある男は、裏路地に彼女を追い込み、ついでその場所に他の仲間も集まった。
どうやら、もし見つけたら、この場に追い込み、ここで他の者と合流するつもりだったらしい。進退 極まったエノリアはひとまず壁を背に男達と向き合った。エノリアは何とかして、この男達と渡り合っ
てここを抜けたかった。剣でそれを実行するには、背後から襲われることだけは避けたかったのだ。
「エノリアだな」
敬称をつけようとはしなかった。もちろんエノリアは太陽の娘《リスタル》とは認められていないので、つける必要はないのだろうが。
それよりも、自分の名前を呼ぶ男の声の冷たさのほうが気になった。
「そうよ。だけど、それが何だというの。私は私を必要としない宮から出ただけ。金色の髪も金色の目も隠して生きていくわ。だから、ここを通してちょうだい!」
無駄かと思いながら、エノリアは訴えた。おそらく彼らは私をゼアルーク王のまえに連れて行くだろう。だけど、今、私がこの剣を抜いて、この場を切り抜けようと考えているなんて考えていないはずだ。
彼らが動く前に、剣を抜き、虚をつく。
(それが多分、一度だけの好機)
エノリアは甘かった。殺されるとしても、ここで殺されるということは考えていなかった。彼らは自分を生け捕るためにここでは剣を抜かないと思っていた。しかし、虚をつかれたのはエノリアのほうだった。
男達は無言で剣を抜いたのだ。エノリアはすかさず自分の剣を抜く。
「よっぽど、邪魔なのね…」
美しいゼアルーク王の顔を思い浮かべながら、忌々しくエノリアはその言葉をはき捨てたのだった。
◇
ランとミラールの二人は、荷物を乗せた馬の手綱をひきながら、市場の賑わいから少しずつ離れていた。
「何にもなかったね」
ミラールの安心しているのだか、つまらないと思っているのか判断のつきにくい言葉を聞きつつ、ラ ンは頷いた。
「まあな。市場に来るだけで面倒背負い込んでどうするんだよ」
今回はセアラの言ったことは外れだと、勝手に判断して胸をなで下ろした。
「たまには、セアラの言う事もはずれるってことかな」
「やつだって万能じゃないってこと。帰ったら笑ってやる」
セアラと口で言い合って勝った事のないランは、さっそく言う台詞を考えているようだった。
(考えている通りに行くわけないのになァ)
何時からか、セアラと口では言い争わなくなったミラールは、そんな風に考えながら視線をずらす。
「あれ、あの子…」
一人しきりに考え込んでいるランを尻目にミラールは、路地裏を目ざとく見つめた。
「どうした?」
ランもその声に反応して立ち止まる。そこには厩舎があり、荷物が括られた立派な馬と、その見張り役として子供が居た。それだけでは、たいしてミラールも気に留めなかったろうが、その子のある特徴が彼の目に留まったのだ。
「髪に少しだけ光《リア》が混じってるね。ここからは金か銀か分からないけど…」
「お前、そういうのに目ざといのな。ある意味感心するよ」
ミラールでなければ気がつかなかったかもしれない。なぜか、ミラールは小さいころから、光《リア》 の要素を持つ人間を感知することが出来た。光《リア》を感知出来るのは、闇《ゼク》の要素を持っている者だけとされている。前述のとおり、闇《ゼク》の要素を持って生まれる者は少なく、闇《ゼク》
の要素のみを持つ者は、魔物が現れるまでは居ないとされてきた。
ミラールは、風《ウィア》を属性とし、風《ウィア》以外の要素を持っていない。なのに光《リア》 を感知できるのはある意味、彼の特殊能力ではないかとセアラは言っているが、未だによく分かってはいない。
「その光《リア》を持つ者を馬番にするか?普通、親なら嬉々として宮に差し出すだろうに」
「宮からのお使いとか?」
その言葉に、ランの第六感が嫌なものを告げた。
「宮には関わりたくない。嫌な予感がしてきたぞ……」
「セアラの予言はあまり、外れたことがないし……」
二人は顔を見合わせ、頷いた。何も言わずに意思疎通させ、ここから逃げるように歩調を速めた。しかし、何もかも遅かったのだ。
「邪魔邪魔邪魔ああ!……どっきなさいよ!そこおぉ!」
二人の目の前に象牙色の布を纏った女が飛び込んできた。その肩はうっすらと赤くなっている。フードからその瞬間少しこぼれおちた金色に気を取られて、二人の反応は少し遅かった。女は二人にぶつか
って、なだれ込むように二人の上に倒れる。
「どこに目をつけてるのよ……」
「そっちこそ……!」
「いたた……」
ランは不満たっぷりに顔を上げて、自分の上に倒れている女の顔を見た。そして、しばらく唖然とす る。フードから出ている髪とフードの影になっている目までが金色……。
「お前……」
「せっかく、ここまで逃げ切れたのに……!」
「ラン、この人怪我してる!」
思わず彼女の肩に手をかけていたミラールは、自分の手についた血を見てそう言った。右手には抜き 身の剣を持っていたらしく、よく見れば向こうに軽そうな剣が転がっていた。
向こうから、ざわざわと数名の男の声がしていて、こっちに向かってくる。
「追われているのか」
ランは彼女を慎重に起こしながら、そう聞いた。よく見れば顔色が悪い。さっきの怒鳴り声の生きの 良さが嘘のようだ。
肩の傷は深そうだった。よく走ってこれたものだと、ランは感心する。
「おい!」
突然、彼女の体から力が抜ける。ランはすぐにその体を受け止めて、顔をのぞきこんだ。ここまで、 走ってくるのに全ての力を使い果たしたようだ。
「おい!しっかりしろ!」
「何も……。……望んでなかったのに……。ただ、自由だけ……を。こんなもの望んでいなかったのに……」
うわ言のようにそう言い、彼女の金の目から涙が零れ落ちた。ランはそれを見て目を見開く。ミラー ルが心配そうに覗き込んで、彼女の顔にその影が落ちた。
「望んでいなかったって、言った?」
「自由だけ望んでいたってさ。……。……応急処置を頼む。それから、結界を張れ」
ランは彼女がやってきた方向に、目をむけた。ミラールもすぐに状況を察してを抱き上げ、後ろへ下 がる。
追手らしき数名がばらばらとラン達の目の前に現れ、立ちふさがった。明らかに友好的ではない態度 をとって、ランは男達と彼女の間に立ちふさがった。
「悪いが、その娘をこっちに渡してもらおうか」
ランは腰の剣に手をのばす。左手にはめた腕輪の宝石をちらつかせながら、6人の追手と対 峙する。
「嫌だね。大の男がどんな理由を持っていようと、女一人によってたかるのは卑怯だろ?」
赤と緑の宝石が、男達を威嚇した。緑は地魔術師《アルタ》を赤は火魔術師《ベイタ》を表す。普通に飾るための宝石を着けているものもいるが、これは魔術の属性をあらわす腕輪だった。
これを見て逃げてくれたらそれが一番良い。
「フォルタか!」
「まさか、こけおどしだ!」
属性の強いものが魔術師となれる。属性はその者の持つ要素のことで、一般には要素は一つしかない。 だから、魔術を使うものは一つの要素しか使えない。
だが、まれに二つ以上の要素を持つものが居る。だが、どちらが強いかでその者の属性が決まり、二 つ持っていてもどちらとも魔術として使うのは難しい。要素の強いほう、つまり、属性のほうが魔術として使えるのだ。もちろん、どちらも使えないという場合もある。
ランの属性は火《ベイ》だが地《アル》も要素として持っている。しかもどちらも魔術として使える強さなのだ。こういう存在は珍しい。
すべての属性を持つ物を《フォルタニー》と呼ぶが、二つ以上の魔術を使える者を《フォルタ》・ 『縛られぬ者』という。《フォルタ》も《フォルタニー》も、運命と才能のなせる技だ。
ざわつく男達の中で、一人だけ冷静だった男が、低い声でランに話し掛ける。
「はやるな、若造。素直に渡せば助かる命だ。大切にしろ」
ランはその言葉に、鼻で笑った。
「馬鹿を言うな。お前ら、俺らも消すつもりだろうが。金の髪・金の瞳。そんな存在が二人も居ると知れれば、民衆を怖がらせて混乱させることになる。ただでさえも、魔物騒ぎで不安がっているのにな。それで、消そうとしてるんだろ。王家の威信をかけてな」
男たちは自分たちが城の関係者だということを、否定しなかった。ランは剣を抜き、その切っ先をその男に向ける。
「それを知った一般人を、あんたらが放っておいてくれるとは思えないね。甘い言葉に油断してたら、 後ろからバッサリということもある」
それは日ごろ、セアラから実践で学んだ痛い教訓であった。その言葉を聞いてミラールが思わず笑ったことを、その場に居合わせた者、誰一人気づかなかったが。
「馬鹿でもないようだな。だがな、その娘さえ消えれば、その後お前らが何を言おうと関係ないのだよ。 だから、お前らを殺す必要もない。渡してくれれば、それでお前らには関係のないことになるんだ。なんなら、報酬も払う」
男の下卑た笑いが、ランの反感をくすぐった。金で人が動くと思っているやつ特有の笑いが、彼は大嫌いだった。
「怪我人を売り渡すほど、金に困ってるわけじゃない。一人の女に、六人で寄ってたかるような奴等から、金をもらいたいとも思わないしな」
「これは王家の威信がかかっているのだぞ」
「王家の威信? 自分の誇りのほうが大切だね」
ランはにやりと笑った。
「女一人、よってたかって殺して、それで守られるのが王家の威信か? ……馬鹿馬鹿しい……」
男たちは何も言わずに、戦闘態勢に入り攻撃に移る。それに対して、ランは剣を地面に突き立てた。
「《ラン・ロック・アリイマ・アルタ・ディス・メル・サ・メルシア》」(ラン・ロック・アリイマの名に集え、大地《アル》の精霊。前面の敵の動きを封じよ!)
ゴゴっと地面が揺れ動き、一瞬男達の体のバランスが崩れた。ランは剣を抜き取るとすばやく男達の 中に切り込む。金の話をしてきた男にまずは向かった。さすがに、城の関係者であって、それに対する反応は早かった。称号を受けているものだろうか?と考えて否定する。暗殺家業めいたものを、称号を 持つものがするわけ無い。
彼は、足を地にすくわれながらも、持っていた剣でランの剣を受ける。はね返すにはランの剣は早く、強すぎた。また、男は若造と思って油断もしていた。
力に押し切られ、驚きの声とともに、ランの剣は男の肩を切り裂く。
間髪入れずにランは剣を他の者へ向けた。
他の五人の男はひるんだ。ランに切られた男が一番の使い手だったらしい。魔術も使え、剣も使える。 王からの命令も大事だが、自分の命はもっと大事だった。
やられた男をかつぎ、慌ててその場を立ち去る男達は、捨て言葉もいくつか言ったようだったが、ラ ンは気にも留めなかったので、覚えていない。ランは男達を追いかけたりせず、ミラールの抱えている女のほうへ駆け寄った。髪はきっちりとミラールがフードの中に納めてやっていて、光《リア》を表す ものは白い顔に一層映える金色の目だけになっていた。
「いいの…?さっきのは、城の関係者…。あんたたち、…王に刃向かったことになるのよ…?」
ミラールの応急処置でだいぶ血は止まったらしく、女の顔色はさっきよりはましになっていた。だが、 その言葉は弱々しい。
ミラールは心配する彼女に微笑む。
「なんとかなるよ。それより、傷の手当てをちゃんとしなくちゃ」
「……迷惑がかかるわ……。大丈夫。あとは何とか……」
無理に一人で立とうとする彼女を、ランはミラールの腕の中に押し返した。すこし、乱暴にも見えたが、ランなりの気使いなのだ。
「もう、充分巻き込まれてる。心配するな。とにかく、家に運ぼう」
ミラールは彼女を抱きかかえ、馬に乗った。ランは、あの厩舎にある馬は彼女のための物だろうと察したので、見張り役の子供に彼女を確認させて、馬を受け取った。
子供は不審な顔をしていたが、月の娘《イアル》様の言い付け通り、このことは忘れますとエノリア様に言ってください、と神妙に言って駆けていってしまった。それで、彼女の名前がエノリアだと知ったわけだが、ランはそこでため息をつかないではいられなかった。
「魔術使ったの後悔してるの?それとも、かっとして何も考えなかったことを後悔してるの?」
ランのため息の理由を少し察して、馬上からミラールはランに問い掛ける。
「全部」
ぶすっとしてそう呟き、両手のこぶしを握り締める。
「結果的に宮に関わってしまったことも、思わず魔術を使ってしまったことも。全部だよ!」
半分以上投げやりな解答に、ミラールは苦笑した。
「でも、いい判断だったと僕は思うけど?剣だと、ああも早く決着はついてなかっただろうし。最悪、 あの人たちみんな殺さなくちゃならなかっただろうから」
「……人を切ったのは、久しぶりだ」
ランは少し遠い目をする。そして、自分の右の手のひらをまじまじと見た。
「いやな感触だな。あいかわらず」
「最近、何もなかったからね……」
ミラールはしみじみとそういう。ランは、馬の速度を少々速めた。ミラールもそれに続くように、かつ慎重に速度を速める。
「もう、少し平和なままで居れるかと思ってたけどな」
エノリアが招き入れた災難だが、受けたのは自分の意志である。よくわかってはいても、いまいち納得の行かないようなランの呟きをかすかに耳に入れて、ミラールは心配そうにランを見た。
「ラン」
「セアラの予言は当たったわけか」
しかも最悪な形で。どうやら、セアラとミラールとの平穏な生活は一番最悪な形で、終わりそうだと思って一つ息を吐いた。
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