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 シャイマルーク城下の外れに【緑の館】と呼ばれている大きな屋敷があった。人通りもそんなに激しくない場所にあったので、 シャイマルーク城下にしては、のんびりとした風情が広がっている。
【緑の館】と呼ばれるのは、その屋敷が城下で一番広くて美しい庭を持っているからだろう。その屋敷の主はセアラという。 だが近所に住む人々は、そのセアラという人間がどんな人であるのかを知らなかった。
 そのかわり、といっていいものかは判断しかねるが、二人の同居人のことは、少しだけ知っていた。
 一人はラン=ロック=アリイマという少年で、たいてい腰に立派な剣を下げていることから、剣士だと察することができる。深 緑の瞳は鋭く、口元はいつも引き締められている。髪の色は深い黒で、背中まであるそれを無造作に紐で括っていた。一見、凛々 しい騎士ともいえそうな風貌をしているのに、庭で洗濯物を干したり、パンや野菜を抱えて市から帰ってくる姿を見ると、その印象もがらがらと崩れ落ちてしまう。
 もう一人は、ミラール=ユウ=シスランという少年だ。薄い茶色の目は優しく、口元にはいつも笑みが宿っていた。髪の色は瞳 と同じ薄い茶色で、後ろ髪は襟足まで伸ばしている。柔らかい髪は、風が吹くとフワッと舞う。彼には、音楽家としての才能がある。
  今は修行中で各地で行われる演奏会に出たり、祭りに参加したりしているだけだが、いつも彼の練習でその音を楽しんでいる 近所の人々は、音楽家として世界中に名を馳せる日々を待ちわびていた。『彼は私の近所に住んでいてね、毎日のようにその音楽を楽しんだよ。もちろん、彼が一流の才能を持っていると言う事には気づいていたさ』と、言う日を楽しみにしているのだ。
 小さいころからこの二人の少年を知っている人々でさえ、屋敷の主のことを知る者はいない。二人に聞くと、『自分達の養い親 みたいなもの』とは答えてくれるが、何をしているのかは詳しく話してくれない。
 人々は不審に思うのだが、ランやミラールが立派な若者だったので、養い親という人も悪い人ではないのだと、一人納得して終わった。
 近所の娘さん達にいたっては、そんなことはどうでもよく、ラン派とミラール派に分かれて、毎日を楽しく過ごしていた。かっ こいい系のラン派と可愛い系のミラール派、それに加えて美人系のゼアルーク王派を交え、きゃあきゃあと過ごしているあたり、平和そのものであった。
 だが、近所の人々の知っている事情と、本当のこととは大きく異なる。大体、セアラの実態から言って、『二人の少年の養い親』と言うだけでは済まされないものがあった。
 彼は今から約五百年前、乱世の終結に一役買った大魔術師セアラ、本人である。名をセアラ=ロック=フォルタニーと言う。彼が まだ生きていて、この場所に住んでいるということを知る者は、ゼアルーク王とその側近、重臣数名と宮の長老である大地の娘 《アラル》・ダライアだけである。生きたまま伝説となった彼は、まだその魔力でシャイマルーク国を守っていた。
 彼がまだ生きているということを知らされたとき、その人は必ず老人の姿を想像する。だが彼の姿は、二十代の青年そのもの のままだった。真理を見極めたかのような赤い瞳は神秘的で、彼に会うことが出来る者はその目の印象を忘れることが出来ない。 振り掛かる乳白色の前髪の間からその額につけた環の宝石がのぞいている。
 目と同じく赤い宝石を中央に一つ、それを挟むように青い宝石を二つ、そこから離れて対照になるよう黄色の宝石が二つ、ちょ うど耳の上に当たるところに透明な宝石が二つ、後ろに小さな緑の宝石が二つ付いている環である。
 この宝石の色には意味がある。赤は火《ベイ》、青は水《ルーシ》、黄は光《リア》、透明は風《ウィア》、緑は地《アル》を 現している。そして、それはどの魔法が使えるかを示し、魔術師達は身につける宝石の色で、自分が何魔術師なのかを表すのだ。 つまり、セアラは闇以外のすべて魔術が使えるのだ。そういう人間を《フォルタニー》、つまり【縛られぬ者】と呼ぶ。その称 号を持つ者は、記録に残っているだけではセアラしか居ないのだ。
 今日も彼は、居間でくつろぐランに嬉しそうな微笑みを浮かべて近づいてきた。たいていの人間がその笑みを見れば、『光のあ ふれるような』とか、『創造神《イマルーク》の最高傑作』とか、大仰な言葉をつけて形容しようとするだろうが、長年共に暮ら してきたランにはピンとくるものなのだ。こいつは何か企んでいる顔だ、と。
「なんだよ」
 先手をきってランは顔を上げた。だらしなく寝椅子に寝そべっているランに不快な顔もせず、セアラは微笑みを絶やさない。
「まだ、何も言ってなんかいないよ」
「でも、何か言おうと思ってんだろ。あんたがそういう顔すると、必ず厄介ごとが沸いてくるんだよ。何」
「ふう、このお子様は知恵をつけて可愛くなくなってきたなぁ。面白くない」
「お子様…。俺はもう十八だ。ああ、でも齢五百歳にもなる爺から言えば、誰だってお子様だよな」
「年齢は言わないでよ。こんなにぴちぴちなのに…」
 すねたように両手で頬をつつみ、恨めしそうにランを見る。何だってこういうしぐさが似合うのだろう。これが伝説の大魔術師 か?と、かすかな頭痛を感じつつランは、無視することに決め込んだ。
「ねえ、ラン。今日の夕食の当番、君だったよね。何作るつもりなのさ」
「あるもので、適当に何か作る」
 夕食の当番制なんて、あってないようなものだ。ランとミラールが交互にしていることで、セアラは『我関せず』なのだから。セアラが台所に立つと、何を食べさせられるか分かったものではないから、そっちのほうが安全なのだが。
   六年前まではお手伝いのニナが通ってくれていて、夕食の準備はしなくてよかった。このお手伝いは城がセアラに対して手配 してくれた人材で、セアラの正体を知らず、ただ高貴な血の人とだけ伝えられて面倒を見てくれていた。
   口が堅いことを売りとしている人が派遣される。ニナは老齢だったので(もちろんセアラからすれば若いのだけど)、ランとミ ラールにはおばあちゃんのような存在だった。しかし、病には勝てず六年前に創造神《イマルーク》のもとへ召されたのだ。
 外に出られないセアラの代わりに、二人はそっと葬式に出た。初めて身近な人が死ぬというのがどんなことかを知った。ニナとの 思い出を頭に巡らし、涙で目を赤くしながら家へ帰ると、セアラが台所に立っていた。『ニナがよく作っていたスープを作ってみた んだ』と言いながら、目の前に湯気の立った皿をならべた。
 湯気のせいかかそれとも涙のせいかか、セアラの優しい微笑みは思い出す限り、紗がかかっていてぼんやりしている。二人は初め て見るセアラの料理に、目を丸くしながらスプーンを握った。
それは温かくて心に染みて、セアラの愛情を感じたけれど、味が現実を突きつけた。
 ようするに、まだ十二歳で包丁も持った事のない二人は、セアラは当てにならず、これからの食生活は自分らでなんとかせねばならないということを思い知らされたのだ。
 そのスープの味はどんなに甘く見積もっても、これからの食生活を彼に任せられるという判断ができるような代物ではなかった。
 今から思うとあれはセアラに先手を打たれたのではないかと思う。わざとまずく作って、食事を作る役割から外れようとしたのだ ろう。他のお手伝いを頼めばよかったのだろうが、セアラもラン達もそれは考えなかった。ニナ以外の存在を家に入れる気がしなか ったし、セアラも今までのように一人で暮らしていたのならまだしも、同居人がいるからいいや、という気分だったのかもしれない。
「それじゃ、だめだよ。今日は羊の肉が食べたい気分なんだ。子羊の肉をね。それにクリームのソースをかけてね。ミラールがよくやってるようなのを。それからサラダも」
「材料がない」
「買ってくればいいじゃないか!今日も市は開いていると思うけどね。ついでにパンも買っておいで。明日の分がもうないのだよ」
 内心、このわがまま男め、と思いつつランは、寝椅子から体を起こした。
「い・や・だ」
 はっきりくっきり発音すると、ぷいっと横を向いてそのままその場を立ち去ろうとする。こういう場合は逃げるが勝ちだ。
 セアラはその後を追いかけるような真似をしなかったが、大きな声で独り言を言った。
「昔は可愛かったのにな。こーんなに小さくて、私の後ろをちょこまかとついてくるんだ。見たことのないものの前で立ち止まって は、目をきらきらさせてね、こう聞くんだよ。『しぇあら、これ、食べられる〜?』ってな。食べられないよって言うとね、『食べ る、食べるの〜』っていって手足をばたばたさせて、真っ赤な顔してね。おもらし…」
  そこまで言うと、真っ赤な顔をしたランが、一秒とせずに戻ってきた。
「畜生! 人が覚えてないからって好き放題言いやがって!」
「嘘じゃないよ。私はね、君とミラールとの思い出は、大切に心にしまっているんだ。君が私のことをきちんとセアラって呼べるよ うになったのは5歳のときでその前まではミラールに『らんちゃん、しぇあらじゃないよ。セアラだよ』って指摘されて、よく泣いていたものなあ」
「!」
「泣き虫坊主がこんなに生意気になるなんて、育ての親としては感慨もひとしおってやつだよ」
「俺の人生で最大の汚点は、あんたに育てられたってことだよ。最もちゃんと育ててくれたのは、ニナだとおもってるけどな!」
 その言葉に堪えたそぶりも見せずに、セアラはにっこりと笑った。
「それでも、私は私なりの愛情を注いだつもりだがね」
 それを言われると反撃できなくなるのだ。ランは言葉に詰まってしまった。この人も、五百年近くも生きてきた人間の器用さや不 器用さを込めて、二人の何の関係もない子供を育ててきたのだ。多少、ひねくれた愛情だった気がするが。
「君達は実にいい息子であり、弟子だよ。私のために、掃除・洗濯・料理・雑用。とくに君は、私の退屈凌ぎ・遊び相手といろいろ尽くしてくれているし」
 少し感慨にふけっていたランの眉間がぴくりと動いた。
「私もね、五百年近く生きてきて、君ほど退屈凌ぎになる人間にであったのは、初めてだよ。つつけば応えてくれるしね。普通の人 間は、学習能力というのが備わっているからね、何回かちょっかいを出すうちに、反応しなくなっちゃうから」
「俺には、学習能力がないっていうのか」
「ほら、それそれ、そう怒るからさ、おもしろいんだよね。怒った顔が一番好きだよ。ラン君」
 ランの周りの空気が動いた。腰の剣の柄にはすでに右手がかかっていて、瞬時に抜かれた。側にいる人間を気づかせずに切り裂く速さだったが、セアラは軽く後ろにとんでよける。カシャーンとテーブルの上にあった燭台が音を発てて倒れた。
「《ベイ・ディス・ラン・ロック・アリイマ・メル・ルド・ス》」(我に潜む火よ。表に来たりて、同胞を呼ばん。ラン・ロック・アリイマの名にかけて、我の憎む者を滅せよ)
 ランは左手の人差し指をセアラに向けた。彼の指先には、彼の言葉に惹かれた火が灯り、矢のようになってセアラに向かう。セア ラは余裕の態度でそれを見ていた。直前に迫ってやっと口を開く。
「《ディス》」(来い)
 彼にはその一言で十分だった。火は何かにかき消され、ランは舌打ちをした。セアラは、ふふっと笑うと指でランのほうを差し示した。
「《ウィア・フォルタニー》」(風よ。フォルタニーの名にて)
風《ウィア》はセアラの命令をすべて聞くまでもなく動いた。ランの動きはそれによって封じられた。
「ちっ」
 往生際悪く力を振り払おうとするランを、その抵抗力に比例するように風《ウィア》が強い力で締め上げる。動くのを止めたラン の鼻先に顔を近づけて、セアラは笑った。普通の人ならその必要以上に近づいた美しい顔を前に我を忘れてしまうんだろうけども、ランは見慣れて いたし、その笑顔がどんなに災厄をもたらすものかを知っていた。セアラの艶やかな唇が開かれる。
「強力な魔術を使うための原則を忘れたのかい。力に反比例して言葉は少なく。君は上級だから言葉数としてはあんなものでいい だろうね。もうすこし少なくてもいいけど、力がある者が言葉を多めに使っても構わないだろう。その逆はありえないけどね」
「分かってるよ!」
「もう一つ、言葉は正確に正直に、だよ。発音はいいね。精霊語がうまくなった。でもね、君の言葉には二つ嘘が含まれている」
「…俺の名前か」
 威勢のよかったランの表情に、陰りが落ちた。セアラは目を細める。その表情が何を語っているかを、セアラはよく分かっていた。 すっとその場を離れるとくるりと背中をむける。
「もう一つは、『我の憎む者』っていう句だよ。君は私を心の奥底から憎んでいるわけではないからね、精霊も対象を完璧に定めにくいさ」
「……」
 セアラの風《ウィア》の魔術がとかれて、ランの体は自由になった。だが、ランはそれ以上セアラに向かおうとは思わなかった。 自分の中の要素と反応させ、同調させて外の精霊を意のままに動かすのが魔術である。言葉は精霊と要素を繋げ、言葉と心にある 思いにそって精霊は動く。要素の弱いものは同調するのも弱いため、言葉に重点を置かなくてはいけない。逆に、要素の強いもの は同調が強いため、言葉は少なくても心にある思いを精霊が汲んでくれる。
 セアラが『来い』と言っただけで、水《ルーシ》を動かしランの火《ベイ》を打ち消せたのは、セアラのもつ水《ルーシ》の要素が強かったからだ。また、逆にあっさりとランの火《ベイ》 が消されたのは、言葉の『我の憎む者』と心にあった対象のセアラと一致しないため、精霊が迷った結果であり、ランが心の底でセ アラを憎んでは居ないということを露呈したも同然である。ただ動いたのは指で差し示したのと、心にセアラと言う対象があったのにつられただけだった。
 ランは穏やかな表情を、セアラに向けた。何といっても、自分はセアラを大切に思っているのだ。
「セアラ…」
 その呼びかけに反応したかのように、セアラは振り向いた。白くて細い指で形のよい顎をつまんでいる。
「あれは正確に言うと『僕の敬愛する偉大な魔術師セアラ様』。うーん、いやいや、『僕の大切なお師匠様、美しくて優しくてち ょっぴりお茶目で素敵な大魔術師様』も捨てがたいかな」
 一人で感動的に盛り上がっていたランの中で、二本目の堪忍袋の緒が切れた。
「今なら、『我の憎む者』で通用する気がする…」
「最近、こういうことしてやってなかったからね、いくらでもきなさーい」
 と、二人は(片方には遊び心、片方には殺気と随分差はあったが)再び戦闘体勢に入りかけたのだが。
「止めてよね。家の中でじゃれあうのは」
 きわめて冷静な声が二人の間に割って入った。もう一人の同居人、ミラール=ユウ=シスランである。
「じゃれあってるわけじゃない!」
 心外なことを言われ反論するランに苦笑しながら、ミラールは肩をすくめた。
「そんなこと言ってもセアラは心底楽しそうだし、じゃれあってるとしか思えないんだけどな」
「ミラールもするかい」
「結構です。ランとセアラの相手なんかしたら、命がいくつあっても足りないから」
 それで、と言っていつもの言葉を繰り返す。
「何があってこんなことになったんだよ。そりゃあ、よっぽど重要なことで、家の中で魔術を使うなんて暴挙に出たんだろうねえ」
 ちっともそうだろうなんて思っていない口調で、ミラールはそう言った。もちろんお見通しである。二人を交互に見るミラールに、ランは何も言い返せなかった。 「夕飯の献立でちょっともめたんだよ」
 にっこりと笑ってセアラはミラールにそう言った。
「そんなことだろうと思ったよ」
 些細な事で戦いが始まるのは日常茶飯事。ミラールには迷惑と言えば迷惑だが、おかげで彼は結界においては、魔術の腕を磨か れた。ミラールは属性を風《ウィア》とする風魔術師《ウィタ》で、攻撃は中級程度だが、守りにおいては上級と言ってもいいほどに鍛えられてしまった。
「燭台の修理はちゃんとしてよね。おとといの本棚の修理はまだ終わってないよ?それから…」
「ミ、ミラール。市に行こうか?明日分のパンがないんだってさ。それから、ほら、そろそろカッシュも上手い時期だから、パイをつくるとおいしいと思うぜ」
「カッシュはちょっと時期が早いよ?」
「甘ったるいのより、ちょっとすっぱいのもいけるじゃないか」
 ランは話をそらそうと必死だったが、セアラはにっこりと笑うと、ランの肩をぽんっとたたく。
「ミラールも一緒に行っておいで。羊の肉、わすれないようにね」
 自分の出していた要求を忘れることなく伝え、二人ににっこりと例の笑いを残すとセアラは自室に足を向けていった。そして、改めて一度振り替える。
「そうそう、市で何かいいもの拾いそうだよ?」
 にんまりと笑ってセアラは、そのまま自室へ引き上げたが、二人は顔を見合わせ大きなため息をつく。
 セアラの予言みちたことは外れることがなく、そして、あんな顔をして『良い物』という限り、それは災難以外のなにもので もない。ついでに言えば、言い付けを破ったときの仕打ちはその災難以上に恐ろしかったりする。
「最近、暇そうだものな。セアラ」
「お城からの呼び出しが少なくなったからね。ゼアルーク王は、出来るだけセアラから離れようとしているからなあ」
「懸命なことだよ」
 ゼアルークという名を聞いて微妙に眉を動かしながら、ランはそう言った。先代の王のときは、魔術に関わることはほとんどセア ラにまかされていた。城と宮の結界。シャイマルーク国の国境の結界。魔物が現れてからは、シャイマルークの結界を、作っていた。 今は個別に優秀な魔術師をつけていて、セアラが関わるのは顧問としてのみである。昔は、城に住んでいて、各国の城とつながっ いる水鏡も管理していたらしい。一人で住み出したのはつい最近だという。とはいっても70年ほど前かららしいが。
「一人の大きな力に頼ってばかりじゃだめだ。王はちゃんと考えているってことさ」
 ランはまじめな顔でそう言った。そして、セアラの部屋のほうを見上げる。
「セアラはそんな王の意図を分かっている。だけど飽き飽きしてるのだろうな。そのうち、ちょっかいを出し始めるぞ」
「王の権力に対抗するとか考えなければいいけどね」
 ミラールの冗談交じりの言葉を、ランは笑いとばすことが出来なかった。
「やろうと思えばできるさ。5要素を全部持ち、その一つ一つの力が最上級。対抗できるやつなんていない。面白ければなんでもするからな」
「う、うん」
「早めに独立すること考えとこうかな…。セアラと一緒じゃあ、共犯にされかねないよ」
 苦笑してランはそういうと、ミラールに買い物に行こうと促した。今回のセアラの予言は、今までで最強の災難なのだという ことはつゆ知らず、今はまだ幸せな方の二人は馬小屋に向かっていった。
 
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