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プロローグ
 
 創造神《イマルーク》は、まず光《リア》と闇《ゼク》を創った。
 その間から大地《アル》と大地の娘《アラル》が生まれた。
  
 創造神《イマルーク》は大地《アル》に祝福の接吻をした。
 そこからは太陽の娘《リスタル》と月の娘《イアル》が生まれた。
  
 創造神《イマルーク》は光《リア》と闇《ゼク》に祝福の接吻をした。
  
 そこからは火《ベイ》が生まれ、
 水《ルーシ》が生まれ、
 風《ウィア》が生まれ、
 弟である調和神が生まれた。
 
 
 大地の娘《アラル》は、創造神《イマルーク》に倣って大地に祝福の接吻をした。
 するとそこから人間達が生まれた。
  
 月の娘《イアル》は人間に寿命を与え、 
 太陽の娘《リスタル》は人間に心を与えた。
  
 創造神《イマルーク》は、あらゆる生き物を光《リア》や大地《アル》や風《ウィア》や火《ベイ》や水《ルーシ》から創った。
  
 ただ闇《ゼク》は生命が休むためにあった。
  
 創造神《イマルーク》は、この世界を愛し、平穏だけを与えた。
 そして、彼はこの世界をこう呼んだ。
 
 〜巡る世界《アライアル》〜と。
  
『アライアル創世記』より
 
 
 
  なぜ平和だったアライアルから、創造神《イマルーク》が天空に去り、調和神が後を追うように消え去ったのかは、定かではない。 だが、その時期に急にこの世界が乱世へ突入していったことはあらゆる歴史書が語っている。創造神《イマルーク》の末裔が台頭し、最高魔術師セアラが出現するまでの500年もの間、何の意味もなく人々は戦いつづけた。いくつもの小国や村が統合し、また分裂を繰り返していった。
 
 創造神や調和神が消え、乱世が起こったのは、太陽の娘《リスタル》と月の娘《イアル》が何らか負の形で関わっていると推測される。その根拠は、この世界に残る一つの因習――双子に対する迫害である。迷信だと知りながらも未だに双子が生まれると一方を里子に出す習慣を知らない者はないだろう。
 
 二つあったもの、双子、これは月の娘《イアル》と太陽の娘《リスタル》を表しているのではないだろうか。
 創造神《イマルーク》の一回の祝福の接吻で同時に生まれたとされているのだから、双子であったということは想像に難くない。それから考えると、この二人の何かが、乱世へとつながり、それから双子というものが不吉なものと考えられたのではないか。
 なにより、この二人が双子だということが書かれていないのは、その不吉な言葉を避けるためではなかったのか。
 またそこから、祭祀において同じ物が二つあることは不吉であるという観念に至っているのだと私は考える。
 
 
ユセ=ダルト=カイネ著
『月と太陽の娘達』より
 
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